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移民労働者は、世界中で受入国の経済発展に貢献する一方、その家族を含め外国籍であること、言語や文化の違い、社会保障や医療へのアクセスといった点で脆弱性を有しており、新型コロナウイルスへの対応に伴う経済社会への多方面の影響・制限によって一層その脆弱性が浮き彫りになり、適切な保護がなければ直ちに貧困に陥り、その権利が侵害されてしまう状態となっている。

 

例えば、出入国の自由を制限され家族と会うことができなくなったり、収入を得るための活動継続が困難となるにもかかわらず失業保険をはじめとしたセーフティネットにアクセスできなくなったりする例が報告され、移民労働者とその家族の医療面での困難や差別も懸念されている。日本でも、技能実習生の解雇や休業手当の不支給、留学生の内定取消といった事態が報告されている。もともとビザの要件として自由な就業に制限があり、仕事を失うと同時に困窮状態に陥る労働者がさらに増加する可能性が懸念される。

 

ILO、 IOM、 OHCHRといった国際機関は、新型コロナウイルスによって影響を受ける移民労働者の保護のためのガイダンスを発行し、主に政府、企業に適切な対応を採ることを促している。海外では、政府支援の対象を移民労働者にも及ぼし、またサプライチェーンにおける脆弱な労働者を保護するための手引きを提供したりする例がある。日本国内においても、帰国困難者に対する滞在期間の延長のほか、休業手当や奨学金に関する政府支援が見られ、また農業など技能実習生の渡航制限に伴い人手不足となっている業種における労働力支援事業も見られる。

 

日本企業においても、業種・業態にかかわらず、外国人労働者(留学生によるアルバイト等も含む)がサプライチェーンを含む自社事業にかかわって働いているか、その家族も含め新型コロナウイルスの影響を受けているか、安全衛生や生活の糧は確保されているか、その他自社事業がそうした人々の人権への負の影響に関与していないかなどについてデューディリジェンスを行うことが重要である。外国人労働者の収入が途絶えてしまっている場合には、法律に従い休業補償が必要になる場合にはこれを支払うほか、生活支援などニーズに応じた支援を検討することも考えられる。日本の場合は、特に言語の壁により医療や行政情報にアクセスすることが困難なケースが想定されるため、健康相談や医療機関受診の補助、また行政の生活支援や相談窓口について紹介することも有用である。労働組合やNGOでも支援を行っているので、それらの紹介も考えられる。

 

政府や地方自治体からの要請のほか、上記のILOやIOMが発出しているガイダンスも参照しながら、外国人労働者の雇用をできるだけ維持し、健康確保、安全衛生確保、正確な情報提供、社会保障システムへの誘導、日本人との平等確保、またこれらの措置の中でのジェンダーへの配慮に努めることが重要といえる。現在、日本で働く外国人労働者の中には、祖国への移動の自由も制限され、家族と会えず、ビザの要件からほかに仕事を見つけることも困難で、医療や社会保障など生活に必要な資源にアクセスすることも困難という状況に陥っている人も多い。その状況に配慮し、できる限り声やニーズを聴くことが求められている。

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