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第3章

非正規雇用・ギグワーカー・インフォーマル労働者

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日本における非正規率は2019年で約38%であり、その3分の2を女性が占める。また、自身で本業として事業等を営んでおり、雇われない働き方(個人業務請負、フリーランス、クラウドワーカー、内職など)をしている人は約120万人に及ぶ(JILPT、雇用類似の働き方の者に関する調査・試算結果等)。本章では、非正規、ギグワーカー、インフォーマルワーカーといった労働者を非標準的雇用労働者として総称する。
非標準的雇用労働者の一部に対しては、同一労働同一賃金などその格差を是正する取組が進められているが、総じて賃金または報酬、雇用安定、社会保障、技能開発、賠償責任からの保護といった点で正規雇用との比較において保護が十分でないケースがある。また、こうした働き方には一般にジェンダーの偏在が認められる。


非標準的雇用労働者については、新型コロナウイルスへの対応に伴う経済社会への多方面の影響・制限によって一層その脆弱性が浮き彫りになり、適切な保護がなければ直ちに貧困に陥り、その権利が侵害されてしまう状態となっている。国内では、派遣労働者の失業、シングルマザーや接待業の女性の困窮、日雇いネットカフェ難民の住居喪失などが報告されている。海外でも、配送サービスを提供するギグワーカーの社会保障や支援が十分でなく感染リスクにさらされながらも働き続けなければならない状況、大規模ストライキに発展したケース、インフォーマル労働者が食糧支援を受けなければならない状況などが報告されている。

 

こうした状況に対処するため、国際機関のレベルでも国のレベルでも、非標準的雇用労働者に対しても社会保障を適用する動きがみられる。日本国内においても、個人向けの給付金や生活支援、また事業者向けの支援を通じた雇用の維持を図ろうとする方策がみられる。日本のビジネスにおいては、大多数の事業者が非正規や個人事業主などのギグワーカーと少なからず関わり合いを有していると思われる。非標準的雇用労働者とその家族が生活困窮に陥っていないか、身を危険にさらしながら仕事を継続せざるを得ない状況になっていないか、その他サプライチェーンを含め自社事業がそうした人々の人権への負の影響に関与していないかなどについてデューディリジェンスを行うことが望まれる。

特に、オンラインを通じて発注される仕事に単独事業者として従事するギグワーカーやフリーランスとその家族は、社会保障による保護が正規労働者よりも弱いため、仕事を失う場合は直ちに生活困窮に陥る可能性がある(シングルマザーなど)ほか、逆に仕事があれば多少危険な作業であっても生活のために受注せざるを得ない状況が見受けられる。安全衛生の確保のほか、生活支援などニーズに応じた支援を検討することが望まれる。そのほか、行政、労働組合やNGOの生活支援や相談窓口について紹介することも有用である。


政府からの取引上の適切な配慮の要請(取引継続、納期延長等への柔軟な対応等)や地方自治体からの要請のほか、国外における取組も参照しながら、非標準的雇用労働者の雇用をできるだけ維持し、健康確保、安全衛生確保、正確な情報提供、社会保障システムへの誘導、正規労働者との平等確保、またこれらの措置の中でのジェンダーへの配慮に努めることが重要といえる。

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