top of page

医師、看護師、助産師、保健師、薬剤師、検査技師、放射線技師、救命救急士、看護助手、研修生、介護従事者、医療事務スタッフ、清掃スタッフ、医療廃棄物処理者などの医療従事者は、日々、新型コロナウイルス感染の危険と闘いながら、職務に従事している。マスクやガウン、手袋などの医療資材の不足、人手不足、長時間労働や、メンタルヘルスへの影響、医療従事者に対する差別や偏見といった問題が起きている。医療従事者に占める女性の割合からすれば、新型コロナウイルスは男性と女性で不均衡な影響を与える。

 

「ビジネスと人権」の観点からの企業のアプローチとして、自社事業が医療従事者に与える影響を分析し、医療従事者への負の影響を、いかに予防、軽減できるかという観点からの取組が有益である。具体的には、企業規模や特性に応じて可能な限り、増産体制の確保や事業分野の転換による医療資材の製造や、医療従事者に対するその他の物的支援、ヘルスケア事業やIoT/AI事業、労務管理ソフト事業等による医療現場の負担軽減のための技術的な取組、差別や偏見への抗議、そして感謝と敬意の表明など、さらには、長期的に医療従事人材を育成するための投資などが考えられる。

 

日本政府の取組に関しては、感染症例が増えている現段階においては、医療従事者の生命・安全を守るための医療資材の確保が最重要であり、情報提供についても、防護服等の安全対策や感染した場合の健康観察等の対応に関する情報提供が優先となっている。医療従事者の労働時間管理や休憩の付与の実態は現時点において不明であることから、その労働環境の現状把握と手当支給等の対応、働きやすい環境整備のための保育所や介護施設などの確保は課題といえる。各種の対応ガイド等にも、医療従事者の労働環境保護の視点を取り入れ、過重労働防止のための具体的方策を記載することが求められる。また、WHOやILOの提言にあるように、感染症の長期化により、日々感染の恐怖と闘いながら職務に邁進する医療従事者のメンタルヘルスケアに踏み込んだ対策も必要であろう。

 

医療従事者は、人の生命と安全、健康を守り、持続可能な社会を形成するための基礎を担っている。社会が危機にあるいま、使命感をもって最も危険な状況に身をさらしながら活動している医療従事者の生命と安全、健康は、社会の最優先課題である。医療従事者の生命と安全、健康を守るとともに、過労・疲弊を防ぎ、さらなる人材不足を招かないように、政府、企業、その他のステークホルダーは、現状を認識し、さらなる措置を取ることが求められる。

調査レポート​全体を読む

(下記レポート表紙をクリック)

COVID19-BHR.png

​Contact

​問い合わせ先

ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク

弁護士 大村恵実 弁護士 佐藤暁子 弁護士 高橋大祐
   Email: bhrlawyers.japan@gmail.com

   〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1 東京大学9号館304B 
   持続的平和研究センター気付
   TEL: 03-5465-8842

bottom of page