サプライチェーンにおける外国人労働者の
労働環境の改善に関するガイドライン
サプライチェーン外国人労働者ガイドライン
&実践ハンドブック NEW!
Guidelines
サプライチェーン外国人労働者ガイドライン
ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク、外国人労働者弁護団、及び外国人技能実習生問題弁護士連絡会は、2020年8月、日本企業が、サプライチェーンを通じて外国人労働者の労働環境の改善に取り組むためのガイドラインとして、「サプライチェーンにおける外国人労働者の労働環境改善に関するガイドライン」(サプライチェーン外国人労働者ガイドライン)を発表しました。
日本企業が、日本企業及び社会が直面する重大な人権課題である、サプライチェーンにおける外国人労働者の労働環境の改善に積極的に取り組むことは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デュー・ディリジェンスを実施する観点から不可欠であり、「誰一人として取り残さない」理念のもと、国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた努力にもかないます。
そこで、企業を支援する弁護士らと外国人労働者を支援する弁護士らにおいて、その立場を超えた対話と協働を通じたコレクティブアクションを通じて本ガイドラインを策定したものです。なお、本ガイドライン策定のプロジェクトは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から東京2020応援プログラム(持続可能性)の認証を受けております。
多くの日本企業及び外国人労働者その他のステークホルダーの皆様におかれて、本ガイドラインが活用されることを期待しております。
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Handbook NEW!
サプライチェーン外国人労働者ガイドライン実践ハンドブック
ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク、外国人労働者弁護団、及び外国人技能実習生問題弁護士連絡会は、2022年10月、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の協力の下で、サプライチェーン外国人労働者ガイドライン実践ハンドブックを発表しました。
ガイドライン公表後、企業関係者からガイドラインをどのように実践すればよいのか、より具体的な解説を求める要望をいただきました。そのため、GCNJの協力の下で、2022年1~6月に連続勉強会を開催しました。
このハンドブックは、ガイドラインの要点を解説すると共に、連続勉強会に通じて報告された取組事例を報告し、その上で、企業や投資家・金融機関、市民社会、政府がサプライチェーンを通じた外国人労働者の労働環境の改善に向けて取ることができる具体的なアクションを明確にするものです。
サプライチェーン外国人労働者ガイドライン及びこの実践ハンドバックは、日本企業が直面する重大な人権課題である外国人労働者の労働環境の問題に関して、取組事例を交えながら、具体的な対応方法を解説しています。その点で、2022年9月に日本政府が発表した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重ガイドライン」を補完するものにもなっています。
Structure
ガイドラインの構造
サプライチェーン外国人労働者ガイドラインは、I 行動原則、II モデル調達基準、III 対話・協働のための実務指針という3つの文書とその各解説から構成されています。それぞれ補完し合いながら、サプライチェーンを通じた外国人労働者の労働環境改善に向けた道筋を示しています。
Ⅰ行動原則(ガイドライン5頁以下)
すべての日本企業を対象として、国内の外国人労働者に関する人権課題に関し、サプライチェーンを通じた人権デュー・ディリジェンスを実施するにあたって有益な5つの行動を提示すると共に、その留意点も解説しています。
1. 方針・基準の策定
企業は、国際労働基準及び国内法令に基づき、自社の行動規範及びサプライチェーンにおける調達方針・基準を策定する。外国人労働者の労働環境の改善に関する項目を規定した上で、サプライヤーに対してかかる方針・基準の遵守の要請を行う。
2. 確認・調査の実施
企業は、自社の事業及びサプライチェーンにおいて、外国人労働者の雇用の有無に関して確認する。サプライヤーが外国人労働者を受け入れている場合には、重点的に法令遵守・人権尊重の状況に関して調査を行えるよう体制を整え、同体制の下、調査を実施する。
3.苦情処理・問題解決メカニズムの整備・活用
企業は、サプライチェーンにおける外国人労働者及びその支援者も対象として苦情申立や問題提起を受け付ける、苦情処理・問題解決窓口を設置するほか、企業外部の苦情処理・問題解決センター等のメカニズムを整備・活用する。
4.外国人労働者、NGO・労働組合等との対話・協働
企業は、外国人労働者及び外国人労働者を支援するNGO、労働組合、弁護士等と対話・協働しながら、人権侵害リスクの把握に努め、サプライヤーに対し問題がある場合には是正に向けた働きかけを行う。
5.サプライヤーとの協働
企業は、サプライヤーに対して、外国人労働者の人権尊重に関する情報提供・能力強化の支援に努めると共に、外国人労働者の労働環境の改善をはじめとする人権課題への取り組みにかかるコストの分担を含む、適切な取引条件の実現に向けた対話に努める。
Ⅱモデル調達基準(ガイドライン11頁以下)
モデル調達基準は、国際規範及び国内法令をふまえて、外国人労働者を直接雇用する企業や仲介業者等に対する10の期待事項を明確化しています。これらの企業は、モデル調達基準に対応し、その取組状況を開示することで、その取引先や企業・金融機関などからの評価を高めることができます。
サプライチェーン上外国人労働者雇用の可能性のある日本企業も、人権DDの一環として、モデル調達基準をサプライヤーとの取引基本契約に挿入するなど、サプライチェーンその他の取引関係に組み込むことが期待されます。
第1条 中核的労働基準の遵守
第2条 雇用契約等
第3条 仲介業者等の利用
第4条 仲介手数料その他関連費用の制限
第5条 保証金・違約金条項・強制貯金の禁止
第6条 身分証明書等の保管の禁止
第7条 賃金及び労働時間
第8条 労働安全衛生
第9条 渡航・帰航費用
第10条 苦情処理制度
Ⅲ対話・協働のための実務指針(ガイドライン17頁以下)
対話・協働のための実務指針は、日本企業、外国人労働者、それぞれを支援する専門家・団体を対象として、サプライチェーンを通じた外国人労働者の労働環境の改善を目的とした対話・協働を促進するための5つの実務指針を提示しています。
1
対話・協働が相互の利益につながるという理解を共有する。
2
外国人労働者の人権尊重という課題解決にフォーカスする。
3
相互に連携して、サプライチェーンにおける事実調査や働きかけを行う。
4
必要に応じて独立した専門家を仲介者として活用する。
5
他の企業・団体や関係機関とも連携して、解決方法を模索する。
How to Practice
取組事例&実践方法
サプライチェーン外国人労働者ガイドライン実践ハンドブックでは、連続勉強会に通じて報告された取組事例を報告し、その上で、企業、機関投資家・金融機関、労働組合・NGO、専門家、政府など様々なステークホルダーが、サプライチェーンにおける外国人労働者の労働環境の改善に向けて行取ることができる具体的なアクションを以下の通り明確にしています。
1. 日本企業
・すべての企業は、Ⅰ行動原則をサプライチェーンを通じた人権DDのプロセスに組み込む。
・すべての企業は、Ⅲ対話協働のための実務指針に基づいて、ステークホルダーと対話協働する。
・外国人労働者を直接雇用する企業や仲介業者等は、Ⅱモデル調達基準の期待事項に対応し、対応状況を開示する。
・サプライチェーン上外国人労働者雇用がある発注企業は、Ⅱモデル調達基準をサプライヤーその他の取引先との間の契約に組み込む。
2. 機関投資家・金融機関
・Ⅰ行動原則を投融資取引を通じた人権DDのプロセスに組み込む。
・Ⅱモデル調達指針を投融資先との間の契約条件や評価基準に組み込む。
・Ⅲ対話協働のための実務指針を通じて、投融資先企業やステークホルダーと対話協働する。
3.企業を支援する団体・専門家
・Ⅰ行動原則やⅡモデル調達指針に基づき、日本企業の取組を支援する。
・Ⅲ対話協働のための実務指針に基づいて、企業やステークホルダーと対話協働する。
4.外国人労働者及び外国人労働者を支援する労働組合・NGO・専門家
・Ⅰ行動原則やⅡモデル調達指針を実践するように、日本企業の取組を支援する。
・Ⅲ対話協働のための実務指針に基づいて、企業や他のステークホルダーと対話協働する。
5.政府
・企業がサプライチェーンを通じた外国人労働者の人権への負の影響を評価・対処する人権DDを支援・促進する。
・企業その他のステークホルダーがサプライチェーンにおける外国人労働者の労働環境の改善に取り組むための環境を整備する。
・外国人労働者を保護する労働関連法令等を適切に執行する。
・外国人労働者の人権侵害を助長し得る法制度を速やかに見直す。
News
サプライチェーン外国人労働者ガイドライン
関連ニュース
2022年10月24日
実践ハンドブックを公表しました
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の協力の下で、サプライチェーン外国人労働者ガイドライン実践ハンドブックを策定・発表しました。
2020年10月8日
労働開発研究会セミナーで紹介されました
労働開発研究会において、指宿昭一弁護士が「国内の外国人労働者の労働環境改善と企業に求められる取り組み」と題して講演し、「サプライチェーン外国人労働者ガイドライン」と外国人労働者の労働環境をめぐる問題を解説しました。
Contact
ガイドライン 問い合わせ先
ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク事務局
(担当 弁護士 大村恵実 弁護士 高橋大祐)
URL: www.bhrlawyers.org
Email: bhrlawyer.japan@gmail.com
〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1 東京大学9号館304B
持続的平和研究センター気付
TEL: 03-5465-8842
外国人労働者弁護団 外国人技能実習生問題弁護士連絡会
(担当 弁護士 指宿昭一 弁護士 中村優介 弁護士 宮城知佳)
URL: www.grb2012.wordpress.com / www.kenbenren.www.k-chuolaw.com
Email: grb.jimu@gmail.com